高圧受変電設備の操作電源は交流が多いが、大型設備や重要な設備では直流100V級が使われている。この場合の直流は一般的には鉛蓄電池が使われその電圧は2V×54セルの108Vが使われている。
蓄電池は整流器と並列に接続され常時充電(浮動充電)される下図のような方法となっている。鉛蓄電池の場合種類によって違うが108Vに対し116.1~120.4Vで充電される。仮に120.4Vで充電された場合、出力電圧も120.4V近くとなる。直流100V定格機器の各種規格では一般的に±10%の90~110Vの電圧であれば支障なく動作する事になっている。これに対し120.4Vが連続的にかかれば機器のコイル等が焼損(短時間しか印加されない遮断器等の投入、引き外しコイルは別)する事になる。
さてどうするものかと言う事になる。少なくとも120.4-110=10.4Vを下げる事を考えないといけない。方法としては、
イ・シリ-ズレギュレ-タを使う。
ロ・DC-DCコンバ-タを使う。
ハ・シリコンドロッパを使う
。
などの方法があるがイ、ロは高価なので一般的にはシリコンダイオードを使ったシリコンドロッパを使っている。
シリコンダイオードの特性を見るため、シリコンダイオ-ド 東芝 1S1830 ピーク繰り返し逆電圧1000V 平均順電流1A定格の物の通電電流による電圧降下の例を見たのが下表(測定回路は下図)である。電流比が20倍(0.05A~1A)になっても電圧降下比は1.2倍程度くらいにしかならない。このような特性に着目し各蓄電池メ-カ-はシリコンダイオ-ドを使い負荷電圧の補償をしている。シリコンダイオ-ドを使って電圧を下げるので通称「シリコンドロッパ」と呼ばれている。
ダイオ-ド1個で0.8Vの程度の電圧降下となるので20個直列で16V程度の電圧降下が見込める。
電流[A] | 1本[V] | 2本直列[V] | 2本並列[V] | 備考 |
---|---|---|---|---|
0.05 | 0.732 | 1.457 | 0.702 | |
0.1 | 0.761 | 1.509 | 0.729 | |
0.2 | 0.785 | 1.563 | 0.756 | |
0.3 | 0.799 | 1.589 | 0.772 | |
0.4 | 0.807 | 1.610 | 0.782 | |
0.5 | 0.814 | 1.624 | 0.790 | |
0.6 | 0.820 | 1.635 | 0.796 | |
0.7 | 0.825 | 1.646 | 0.802 | |
0.8 | 0.828 | 1.657 | 0.807 | |
0.9 | 0.832 | 1.670 | 0.813 | |
1.0 | 0.838 | 1.706 | 0.828 |
写真1・直流電源装置(蓄電池設備)DC108V 50Ah(10時間率)54セル
写真2・シリコンドロッパ-(10個直列が2段) 0.8V×20=16V程度電圧を下げる事が出来る
写真3・シリコンドロッパ-の拡大・放熱を兼ねたアルミ板で直列に接続
写真4・整流器電圧・電流 121V 2.0A
写真5・蓄電池電圧・電流 120V 0.7A
写真6・負荷出力電圧・電流 104V 1.4A 蓄電池電圧より16V降下している
写真7・表示パネル