電線の電磁的平衡


 金属管配線をする場合、内線規程では1回路の電線全部(1φ2Wでは2線、1φ3W、3φ3Wでは3本、3φ4Wでは4本)を同一管内に収めて電磁的平衡状態で施設せよとなっている。同じく、電線を並列に使う場合は電磁的平衡を取って使えとなっている。じゃ電磁的平衡を取らないで使用した場合どうなるかを確認して見た。

 8sqの600Vビニル電線(IV)2本に1φ2Wの50~60Aを流し直径31mm程度のSUS管、31の薄鋼電線管を各々2本使い1本には2本の電線を通し、もう1本には1本の電線を通してその温度上昇をみた(実際に8sqを31の電線管に入れる場合の許容電流は電線3本以下で42A)。

 結論として言えることは電磁的平衡を取らないで金属管に電線をいれた場合、高々60A程度でも渦電流による発熱で温度上昇が30℃近くになり、夏には最高気温を35℃とすれば管そのものは65℃と熱く、人が触れば火傷をするし、その前に管内の電線が焼損する事になる。4~600Aが流れる回路では異常な高温となる事が推定できる。

 そんな訳で金属管に電線を入れる場合は電磁的平衡を取って入れろと言う事になる。逆に渦電流を利用したのがIHヒ-タである。

 電線管に1本の電線を入れた場合は電磁的平衡が無いので渦電流により一番温度が高くなり、SUS管に1本の電線を入れた場合も電磁的平衡はないが、SUSは非磁性体の為渦電流が少なく温度が一番低くなる。

 しかし、電線管、SUS管に2本の電線を入れて電磁的平衡を取ったがどちらも温度がSUS管に1本入れたものより高いのは電線が2本なので流れる電流でのI二乗R(ジュール熱)が倍になるのでその熱伝導によるものである。

 電線2本でも非磁性体の方が高くなっているのは管の中での電線のねじれから温度センサ部分に電線が近くなりその熱伝導によるものと思われる。同時に見ると言う事で今回は適当に電線管、SUS管に電線をつっこんだので機会があれば電線のクセを取って各々単独でやってみたい(時間は4倍かかるが)

 電線の温度上昇                            単位[K→℃に同じ]

電流[A] SUS2本電磁的平衡有 電線管2本電磁的平衡有 SUS1本電磁的平衡無 電線管1本電磁的平衡無
50 17.0 13.6 12.5 20.8
60 23.5 18.6 17.1 27.5



 内線規程の並列使用の場合

電磁的平衡を取った場合、取らない場合の温度上昇の差

全体の写真・下 電線のクセを取っていない

SUS管、電線管に2本入った状態・下 電線のクセを取っていない

電線管から2本出てSUS管、電線管に1本入った状態・下

回路の終端・下