電力融通


 同期の友人連中に色々な判らない事を教えてもらっているが、その友人の一人がガンで一 年近くの闘病生活を送ったが薬石効なく黄泉の国へ11月9日に旅立った。 
 
 その彼が旅立つ前の11月2日に「電力融通」の件で次のようなメールをくれた。そして、4日に病室から「自宅で動くと大息をつくので」、11月3日再入院したとのメールがメル友一同に送られてきた。多分これが絶筆であろうと思われる。ありがとう おとん 合掌 
 
 電力融通。いろいろむかしからの経緯があって、「早い話が・・・」と一言で言えないところがある。「電力連携」を「電力連系」と書いているのは「電力系統で接続している」と言う気持ちから「系」にこだわっています。 
 
 「電力連系の必要性」 
 
 電力会社が自分の会社単独で電力系統を運転していると需要消費量=発電量のバランスがとれなくなる時がある。バランスが崩れると周波数が基準値の50ヘルツまたは60ヘルツを保てない。特に、突発的な発電力脱落事故や送電線事故などによる需要脱落時に上記のバランスが崩れ、周波数が乱れる(荒れる)こととなる。 
 
 つまり、お客様に質の悪い電気を供給することとなる。このように、電力会社は単独で系統運用をしていると、いろいろなトラブル時に質の良い電気を供給できないため、隣の会社と 電力連系を図り、隣の会社に有事が発生すれば、応援しあうこととしている。 
 
 このような電力連系をする地点を「電力連系地点」と言い、電力融通の量管理を単純に行うため、1か所にしている。このような趣旨で、電力会社は隣の会社と電力連系を図り、それが全国に広がり「全国連系」と言う形に成長したのです。 
 
 隣の会社と電力連系をするのであるから、有事に多くの電気を流すことが出来る電圧の高い方が良い。と言うことで、現在最高電圧である500kVで連系しています。 
 
 「電力融通の種類」 
 
 ある会社で電力不足のため、どこかの会社から電力融通を受けたい・・・と言うような場合は「電力連(携)系地点」で電気のやりとりを行うこととなります。これを「全国融通」と言います。極端な例は、北海道から九州に応援融通するようなこともありますし、その逆もあります。日本は電力系統の発達の歴史から「50ヘルツ」と「60ヘルツ」の2つに分かれております。 
 
 この間を「周波数変換設備」で連系しております。この設備で全国が連系している訳です。 
 
 「全国融通」とは異なり、ローカル的な例を2つ東京電力の例で話します。 
 
 1つ目 
 
 9電力に分割した時に、新潟県・信濃川地区や福島県・猪苗代地区の水力発電は東京電力所属となりました。この地区の供給は東北電力管轄です。東北電力は自分の会社の設備から、この地区に配電設備を新たに敷設すると、莫大な経費がかかる場合があります。そこで、東京電力の水力発電で発電した電気を地元に供給すれば東北電力は大助かりです。 
 
 このように直接地元に電力供給する方式を「小口融通」と言います。どれだけ電気を融通したかは「メーター」で測ればよいから、金銭決済でおしまい。 
 
 つまり6kVの配電線で東京電力から東北電力に電力融通をしていることとなります。 
 
 2つ目 
 
 新潟県東上越の需要増加のため、東北電力は「275kV東上越変電所」を建設したい、しかし、当時の東北電力は新潟に275kVの送電線がない。東京電力信濃川発電所(水力)は275kVの送電線に接続している。そこで信濃川発電所から東上越変電所に275kV送電線で送電することとなった。東上越変電所に送った電力は「同時同量」で東北電力と東京電力の電力連系地点である「500kV相馬双葉幹線」で東北電力から返還してもらう。このような電力融通は「系統運用電力融通」と言います。 
 
 ちょっとだけ・・・と思っていましたが、話が長くなりました。勤めていた「中央給電指令所」は東京電力の周波数を管理をしているところです。(当時も今も)時には発電力が足りない場合、(いつも)そのような状況時には隣接の電力会社に「応援融通」をお願いしておりまし た。 
 
 中央給電指令所勤めで良かったなぁと思う時は、「お願いします」と心から言える事です。 
 
                               おとん 自宅にて
 
 と、心から申しておりました。