低圧電線路の絶縁性能


 電技第22条「低圧電線路の絶縁性能」では、 低圧電線路中絶縁部分の電線と大地との間及び電線の心線相互間の絶縁抵抗は、使用電圧に対する漏洩電流が最大供給電流の1/2000を超えないようにしなければならない。となっている。   
    
 電技第58条「低圧の電路の絶縁性能」では、電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の表の左欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ、それぞれ同表の右欄に掲げる値以上でなければならない。となっている。   

 電技第1条の用語の定義は下記のようになっている。    
    
 電線路:発電所、変電所、開閉所及びこれらに類する場所並びに電気使用場所相互間の    
      電線(電車線を除く)並びにこれを支持し、又は保蔵する工作物をいう    
    
 電路:通常の使用状態で電気が通じているところをいう。    
    
 電気使用場所:電気を使用する為の電気設備を施設した建物そのたの狭義における電気    
          を使用する場所をいう。    
    
 法律、省令などは難解なので誰でも判るように、図説、解説、手引き等があるがそれでも私には判り難いところがあるが・・・    
    
 一般的な例として、3φ6600/210V 100kVAの変圧器があれば、その2次側に分岐用の分岐開閉器が複数台設置されている。分岐開閉器から制御盤や分電盤の主開閉器に接続され、さらに制御盤、分電盤の分岐開閉器から各々の負荷に接続されている。    
    
 変圧器を頂点として末端の負荷まではピラミッドを形成したような回路構成になる。    
    
 ここで使用電圧に対する漏洩電流が最大供給電流の1/2000を超えないようにしなければならないとなっているが具体的には、    
    
 3φ100kVAの2次側定格電流は100/√3・0.21≒275A 275A/2000≒138mAとなる。解説では1φ2Wの場合は電線が2本なので1/1000、1φ3W、3φ3Wは電線が3本なので1.5/1000となる。つまり、138mAの2倍、3倍まで許容できる。となっている。接地側電線はどうするのという事になるがこれは接地線を外して測定した場合となっている。    
    
 この場合は3φ3Wなので1.5/1000 275A×1.5/1000≒413mAとなる。使用電圧210Vで絶縁抵抗を見ると、210V/413mA≒508Ω 0.000508MΩ以上あればよいことになる。    
    
 第22条で計算すると0.000508MΩまで許容出来るが、第58条の200V回路では0.2MΩ以上となっている。200Vで0.2MΩであれば漏れ電流は200V/0.2MΩ=1mA 1mAは、100V回路でも400V回路でも1mAとなっている。1mAという漏れ電流は過去幾多の経験、実験を通じて感電や火災の恐れのない漏れ電流と電技では考えているようだ。    
    
 200V回路の0.2MΩは開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとにこの数値以上であればOKなので、末端であれば制御盤、分電盤の分岐開閉器を切って絶縁抵抗を測定すればよい。中間の配電盤の分岐開閉器から制御盤、分電盤の主開閉器の間も両方の開閉器を切って測定すればよい。    
    
 個々で見た場合は0.2MΩ以上確保できても、全体で見た場合は個々の並列測定となるので値は落ちることになる。    
    
 第22条と第58条の関係は、線路全体と個々の線路の関係という事を規定したものと考える。    
    
 20数年以前からインバータが使われ始め最近では非常に多く使われている。そんな訳で高調波が多く、漏洩電流も規定値以上になることもある。が、ここでは商用周波数によるものと考えている。静電容量が高調波によって大きな漏れ電流となり漏電火災警報器の誤動作等はあっても火災の心配はない。    
    
 但し、高調波そのものは進相コンデンサやリアクトルに悪影響を及ぼし場合によっては、唸り、騒音、発熱などで焼損事故に至る事があるので現在は対策が取られている。