かねんてい?


電気あれこれには関係ないが中学生の時くらいと思うが親父が仕事場(鉄工業)で曲尺(かねじゃく)を使いながら「かねんてい」なる言葉を使っていた。これが何を意味するのか正確に判らずに今日に至っていた。角度の事を言っている事は想像できたがそれ以上は判らなかったし聞きもしなかった。たまたま先日工務店の人と話す機会があった。その人も「かねんてい」と言う言葉を使った。早速「かねんてい」て何やと聞いたら「直角の事や」と答えてくれた。漢字でどう書くのかと聞いたが判らないと言い昔からこう言っているとの事であった。

前々から頭の片隅に残っているのでWebでも「かねんてい」を調べて見たが出てこなかった。石川県の南(山中温泉→親父)と北(珠洲市→工務店の人)でも同じ呼び方をしているので業界用語かと思う。そんな訳で初版発行とほぼ同時に買った、著者 長門 昇氏の「建設業界用語辞典」1993年12月20日初版発行(発行所:日本実業出版社)を覗いてみた。 

曲尺(かねじゃく):「差金」(さしがね)ともいい、鋼製の直角に曲げられた物差しをいう。「曲(かね)」は「矩」とも書き、元々は直角を示す用具の事であり、そこから直角そのものをも「曲(かね)」という。また、直角の墨を出すことを「曲を振る」または「曲を巻く」などと表現する。さらに、45度の角度を「曲」ということもある。屋根勾配などで45度の勾配を「曲(矩)勾配と呼んでいる。

勾配(こうばい):水平面に対する傾斜をいう。勾配は基準長さに対する立ち上がり長さで表す。通常は一尺を基準にし、この時3寸立ち上がれば3分勾配という。一尺勾配は45度の傾斜ができ、これを「矩(かね勾配」という。

規矩術(きくじゅつ):いちいち計算することなく、現場で曲尺を読むことによって、直ちに寸法設定を行なう方法である。曲尺の裏目盛は表目の√2倍及び円周尺として3.14倍の目盛が付けられている。√2倍目盛は、丸太から正角材を取る時にその一辺の長さを、円周尺は垂木の反り具合などを直読することができる。規矩術は寛永年間(17世紀前半)にオランダから渡ってきた測量技術を、樋口権右衛門が「矩」に応用して「和算用語」にまとめ、作図によって問題を解く、幾何学的な考えがはじまりとされている。
いままでただそんなもんや見ていたが理屈になっているなと先人の知恵に感心した。

ここまで調べて「かねんてい」の「かね」までおぼろげに判ったが後の「んてい」がいまだに判らない。「電気屋の頭をたたけば、サイン(sin)、コサイン(cos)の音がする」と生業も電気角に付きまとわれている。「かねんてい」のなぞを解く努力を今後も続けよう(^・^)。ほかに父母やおじ、おばに聞いておきたい事も色々あったが今となっては詮無い事である。

ようやく知り合いが2007年3月23日にWebで見つけて連絡してくれました。「かねんてい」→「かねんて」が正のようだ。ありがとう。おまけ、先日、ホームセンターへ行ったら曲尺(かねじゃく)を「まげじゃく」と表示してあり笑ってしまった。

「曲尺手(かねんて)・1」

「曲尺手(かねんて)・2」

写真上・曲尺の表目盛:一般的なmm目盛

写真上・曲尺の裏目盛:上側√2倍の目盛、下側3.14(π)倍の目盛