急がば回れ


  毎年3月3日になると思い出す事がある。今から20年くらい前の話だが当時私は大阪市北区で単身赴任の身であった。たまたまその日は仕事で東京に出張していた。客先から急に見積を今日中に出してくれと連絡があった。

 見積資料はカバンの中に入れてあったので解ったと返事をして電話を切った。東京での仕事を終えて早めに羽田に向かった。週末なのと単身赴任なので金沢の自宅に最終便で帰る事にしていた。

 空港ロビーで資料と電卓片手に見積に取り掛かったが最後まで終わらない。時間が来たので機上の人となった。機はANA便でたまたま3月3日のお雛様の日なので乗客全員に山口特産の小さなお雛様の郷土人形のプレゼントがあった。ほぼ一時間後に小松空港に着き、金沢市内経由金沢駅行きのバスに乗った。(現在は金沢市内経由金沢駅と金沢駅直行があるが当時は直行は無かった)

 最初のバス停は国道まで近く、かつ、自宅から4km近くなのでそこで降りてタクシーで帰るつもりでそこで降りた。が、なかなかタクシーが見当たらないので仕方なく自宅の方へ向かって歩き始めた。行けども行けどもタクシーは来ないし歩道にはベタ雪が5~6cmあり靴の中もべとべとになってきた。自宅に1.5km近くになってもこないので「えいくそっ」と思い家まで歩くことに決めた。

 1時間ほどかけてようやく自宅に着き、見積の続きをやって午後11時過ぎにようやく連絡する事ができた。

 今日は何だったのか、飛行距離で約350kmを1時間、4kmを同じく徒歩で1時間「急がば回れ」が正解の日であった。そんな訳で3月3日のお雛様の日とプレゼントのお雛様を見るたびにこの出来事を思い出す。娘たちは遠方へ嫁いだがお雛様は先週から飾られている。