電蝕(でんしょく)・その1


鉄が良く錆びることは皆さんもご存知の事ですし、皆さんの家庭で使用のステンレスの流し台(シンク)が錆びにくいのもご存知の事と思います。そんな訳で鉄を錆から守る為に塗装、めっきなどをしています。

鉄の防錆はいろいろあるがその中でも一番良いのは「重すぎる溝蓋は考え物」(生活あれこれNo.14)でも書いたが通称「亜鉛どぶ漬け」、正式には溶融亜鉛めっきである。また亜鉛溶射(アルミ+亜鉛もあり、通常どちらも溶射後に塗装を行なう)も同等程度である。

二つの金属例えば、鉄板とステンレスのアイボルト(吊りボルト)を溶接しこれを屋外に放置(2006年1月28日開始)し雨水に曝すとどうなるかを見てみると写真1のように錆びにくいハズのステンレスも、もらい錆を受けてさびたように見える。隣に置いたアイボルトはピッカピッカのまんまである。

 金属のイオン化傾向は下記である

 Al(アルミ)  Zn(亜鉛)  Fe(鉄)  Sn(錫)  Pb(鉛)  SUS(ステンレス)  Cu(銅)
 左側ほどイオン化傾向が大きい→水溶液中で金属の陽イオンへのなり易さを言う。

鉄はステンレスよりもイオン化傾向が大なので、そこに水がたまると水に鉄が溶けてFe2+となり、放出された電子はステンレスのほうに流れ込みステンレスの表面でH2が発生する。このようにしてFeの溶出が進み、むしろ、普通の鉄よりも錆びやすくなる。こんな訳で異種金属の組合せは注意が必要である。このような作用の事を電蝕と言う。

写真2は、写真1の条件の上に塗装をしたものである。塗装膜に保護されて雨水がこれにあたっても中に浸透しないので錆びない。時間が経過して塗装膜がはげて行けば最終的には写真1のようになる。

写真1  鉄(JIS材料記号 SPHC)とステンレス(JIS材料記号 SUS304)を溶接した場合の電蝕作用の状況。

2006.08.18撮影。

写真2  鉄(SPHC)とステンレス(SUS304)を溶接し、その上に塗装した 場合の状況。

2006.08.18撮影。