許容電流・最高許容温度のいろいろ


これまで電線・銅帯(導体)・ケーブルなどの許容電流・最高許容温度は二種類だけかと思っていたがそうで無いようである。勉強不足であった。

 

一つ目は、電線の「許容電流」と言えば常時ある電流を流し続けても問題のない電流である。「電気設備の技術基準・電技と呼称している」や、それ以前の「電気工作物規程・工規と呼称していた」によって定められている(どちらも数値は同じ)。絶縁物の最高許容温度と周囲温度によって許容電流が定められ、周囲温度が変われば電流減少係数の計算式によって計算せよとなっている。

 

一例で言えば、2sqの撚線(軟銅線又は硬銅線)の600Vビニル絶縁電線であれば最高許容温度は60℃と定められており周囲温度が30℃であれば27Aとなっている。周囲温度が45℃であれば√60-45/30≒0.707となり27×0.707≒19A 19Aが周囲温度45℃の場合の許容電流となる。周囲温度が下がれば当然許容電流が上がるが周囲温度が30℃未満の例えば0℃であれば許容電流はもっと大きくなるが周囲温度30℃未満については一律30℃以下としている。

 

0.707は同一管内の電線数3以下の電流減少係数0.70とほぼ同じなので電線数3以下は周囲温度45℃に相当するとも言える。

 

半世紀前の電気の教科書では「我が国の気温が30℃を超える事はわずかであるので周囲温度を30℃」が云々という表現があったと記憶している。が、現在は気温30℃を超える期間(時間)多くあるがこの30℃はそのまま踏襲されている・・・

 

電技は国家の基準でありこれを解説したものもあるが、これらを判り易く補完した民間規程の「内線規程・JEAC -2016」などの規程が日本電気技術規格委員会で作成され日本電気協会より発行されている。これを私等の民間人は利用している。

 

二つ目は、「短時間許容電流」と呼ばれるもので短絡時(時間的には長くて2秒以内)に大きな電流が流れるがその短絡電流とその場合の電線(銅帯「導体」・ケーブル含む)の短時間許容温度がある。「配電盤ハンドブック・1960年」やその後出版された「配電盤・制御盤ハンドブック・1979年」にその詳細が記載されている。何れも絶版となり現在は販売されていない。

 

てっきり上記の二つと思っていたら、日本電線工業会規格 JCS0168 では電線・ケーブルの「短絡時許容電流」と言う上記の二つ目に相当する物のほか「短時間許容電流」と言う短時間定格での過負荷許容電流という物がある。

 

短絡時許容電流に対応する短絡時最高許容温度の一例は下記の様である。

ビニル:120℃(IV,KIV等)

架橋ポリエチレン:230℃(CV,EM-LMFC等)

EPゴム:230℃(KIP等)

ポリエチレン:140℃(EM-IE/F等)

 

日本電線工業会の短時間許容電流は一時的に過負荷で使用する場合で運用可能時間は、累積時間で10時間以内/月となっている。(詳細はJCS0168による)これは、変圧器(油入・モールド)の過負荷運転指針(電気学会技術報告書143号)のようなものと考える。

 

許容電流でもいろいろあるなと勉強した次第である。