所変われば品変わる


家庭用の電気の入口には電力量計(電気料金用)があり次に分電盤にリミッタ(電流制限器)が付いている。リミッタは各家庭と電力会社との契約によって5、10、15、20、30、40、50、60Aのリミッタが付くことになる(電力会社によっては電流値が異なる)。その後に分電盤のメイン(主)SWがあり、次にブランチ(分岐)SWが付く(ブランチの数は負荷数によって変わる)。60Aを超える場合はkVA契約となり、リミッタは付かない。東京電力管内ではリミッタのことをアンペアブレーカと呼んでいる。我家は8kVA契約なのでリミッタは付いていない。

リミッタ : 契約以上の電気を使うと切れるようにしたもので写真のように30Aと表示してあるものは1φ3Wの場合RN相で○A、TN相でΔAの場合、○+Δの合計が30A以上になると切れる、或いはRT相(200V)で□A、RN相で○A、TN相でΔAの場合、□+○+Δの合計が30A以上になると切れる。つまり、R相とT相の電流の合計が30A以上になると切れる(30AとなっているのでRで30A、Tで30Aの合計60Aでないかと思われ勝ちだがそうではない)。現物で確認をしていないので引き外し特性までは解らない。

いまでは、家庭用でも1φ3W(単三)引込が常識でメインSWは中性線欠相保護が付いた漏電遮断器となっている。私が小中学生の時分は1φ2Wの引込で電流制限器と言うハイカラなものはなくて磁器製のカットアウトSWが付いているだけで、爪付ヒューズによって回路保護をしていた。配線もガイシ引配線や木製線ぴ配線でゴム絶縁電線を使った並列配線の1回路だけであった。

電力会社との契約はどのようになっていたか不明であるが、電気を使いすぎてヒューズが切れると荷札の針金をヒューズの代わりにカットアウトに親父が入れていたのを何回か見たことがある。今考えると一寸ヤバイがそんなのどかな時代であった。その時には私は電気屋になるとは思っていなかった。


7~8年前に名古屋のある家庭に行った時、電気を使いすぎてリミッタが切れたのを経験した。分電盤は通常手の届かない所に設置してあるので、北陸電力管内では踏台とか脚立を持ってきて入れ直したり、棒でツマミを押し上げて入れたりしている。が、
所変われば品変わるで、中部電力管内ではリミッタに工夫をし一般的なものと逆の構造とし、下に下げて「入り」、上に上げて「切り」としてツマミに紐を付てある。電気を使いすぎて切れた場合はその紐を引張ればすぐ電気が入り「あぁ理屈になっているなぁ」と感心した。

理屈な : 石川県地方の方言で、利口な、良くできた、感心する、うまく考えたなどのほめ言葉。電気あれこれNo.12の「理屈な計算機だが?」を参照ください。

たまたま先日名古屋に行く機会があったのである家庭用分電盤内のリミッタの写真(写真2)をこの項作成の為に撮ってきた。

2006年11月15日追記
その後、知合いに調べてもらったが東北電力管内ではリミッタの事を単三式安全ブレーカと呼んでいる(リミッタ本体に表示あり)。中部電力管内ではリミッタの事をサービスブレーカ(SB)と呼んでいる。関西電力、中国電力、四国電力、沖縄電力管内ではリミッタは取付けていないとの事であった。狭い日本でも色々あるなと感じた。

写真1(上).北陸電力管内のもの。一般的なスイッチと同じく上に上げて「入り」となり下に下げて「切り」となる。

写真2(上).中部電力管内のもの。下に下げて「入り」となり上に上げて「切り」となる理屈なリミッタ。切れた場合はリミッタについている紐を引けば入りとなる。