電圧降下の盲点


 内線規程では低圧回路の電圧降下は下表の様になっている。

 上表から、亘長が200mを超える場合は高圧需要家であれば7%、電気事業者(電力会社)から供給を受けている場合は6%となっている。  
  
 電気事業者から供給を受けている場合は6%なので3φ200V回路であれば200×0.06=12Vとなり12Vまでの電圧降下であれば許容される事になる。  
  
 一々計算するのは面倒なので内線規程には下表の「電線最大亘長表」が載っている。  

 仮に100mm2の電線で亘長が300mあり電流が100A流れるとすれば、より線100mm2の欄と電流1Aの欄の交点を見ると6,430mとなる。電流が100Aなので1/100すれば、亘長が64.3mで2Vの電圧降下なので300mの場合は(300÷64.3)×2≒9.33Vとなり12Vより小さいのでOKと言う事になる。      
      
 上表は電線の抵抗値だけで計算されており、電線のリアクタンスはないものとしている。電線サイズが小さい場合は抵抗分が多いのでリアクタンスは考えなくてよいが100mm2を超えるあたりから無視する訳には行かなくなる。      
      
 そんな訳で内線規程では亘長が長く電流が多い場合は計算式で計算せよとなっている。が、これを見落として平常時の電流で計算して過渡時の電流を考えずに設計をすると思わぬトラブルになる事がある。      
      
 例えば、100mm2の電線の抵抗:Rは0.18Ω/kmでリアクタンス:Xは0.092Ω/kmであ      
る(60Hz)。インピーダンスは√0.182+0.0922≒0.202Ω/km      
      
 よって100A、300mでの電圧降下は√3×100A×0.202×0.3≒10.5Vとなり表で算出された9.33Vより計算値では13%程度電圧降下が多くなる。この抵抗値は周囲温度20℃の場合であるので夏季、通電時の温度上昇で抵抗は増え電圧降下がさらに多くなる。      
      
 他にはY-Δ始動の電動機ではYからΔに切り替わる際の突入電流は投入位相によって変わるが定格電流の5倍~13倍程度の電流が3サイクル程度流れこの電圧降下でYは運転 するがΔになるとΔの電磁接触器、メインの電磁開閉器が落ちる言う事が起きる。      
      
 高圧需要家の場合は変圧器容量も大きいので上記のトラブルは稀に聞く程度だが、電力会社から供給を受けている場合は小容量の変圧器をV結線にしたものから供給されている事や、諸般の事情で運悪く亘長が長い場合の消雪ポンプや排水ポンプにこのようなトラブルが起きる。      
      
 トラブル例