400Hzってどこで使うの


 先日、400Hzってどこで使うの?何で50,60Hzはダメなの?その他いろいろな事を聞かれ判らない事もあったので調べてみた。  
  
 400Hzは船舶や航空機などの範囲が限られた場所で使われているが私は船舶用については知らない。かなり昔に航空自衛隊小松基地の格納庫へ400HzのMCCBの件で行った事がありその時、戦闘機型名の末尾の記号は?の所もあるが F-86F→F-104J→F-4EJ と変わっていき丁度行った時は、F-104J とF-4EJ が混在しており F-4EJ は F-104J に比べデカイし、爆音もすごかったと記憶している。現在は F-15 である。  
  
 航空機の電気方式は3φ4W 200/115Vが使用されており動力は3φ200Vとして空調や燃料ポンプなどに、電灯、コンセントは1φ115Vである。制御用電源は3φを整流してDC28Vとして使用している。  
  
 飛行機を高速で飛べるようにし、かつ、人、貨物を多く載せて飛べるようにするには機体、付属設備、機器の質量を出来るだけ軽くする必要がある。飛行機は高速でエンジンを回転 させているのでこれを利用して発電機を回す事ができる。電気機器は一般的に周波数を高くすれば効率がよくなる。そんなことから50,60Hzを使わずにエンジンの回転数その他の兼ね合いから400Hzを使用する事になったと思われる。  
  
 国内で使用している50,60Hzの変圧器を見ても周波数の高い60Hzの方が効率よく作れるので50Hzの変圧器に比べ60Hzの物は平均で5%程度軽くなっている。  
  
 つまり、発電機も400Hzであれば50,60Hzに比べ質量が少なく製作でき同様に他の電源機器も軽量に製作できる。こんな訳で400Hzになっている。  
  
 400Hzの場合、50~60Hzに比べ6.7~8倍の周波数になるので汎用品のMCCB(配線用遮断器)を使用すると不都合が生じるので各メーカーとも「400Hz用遮断器」と指定する必要がある。ここでは一般的な熱動電磁形についてしるす。  
  
 表皮効果(スキン エフェクト ・Skin Effect):周波数が高くなるほど電流は導体の断面全体を一様に流れず、表面近くに密集して流れ、導体の中央部分に電流が流れにくくなる現象を表皮効果と言う。したがって導体の高周波に対する実効抵抗は、周波数が高くなるほど直流抵抗より大きくなる。表皮効果は高周波だけと思われがちだが低周波でも起きる。  
  
 400Hz程度の周波数になると導体の表皮効果や導体付近の構造体における鉄損の影響が表れるので通電容量および引外電流が次第に低下する。フレーム通りの定格電流であれば表皮効果や鉄損の影響で定格電流の80%程度にフレームの1/2程度のものでは90%程度に低下する(三菱、富士の技術資料から)。  
   
 周波数が6.7~8倍になるのでリアクタンス(Xl)が増え瞬時動作電流値(電磁要素)が汎用品(標準品)を使用した場合、カタログ値の1.5~2.5倍の電流を流さないと動作しない。そんな訳で400Hz用に調整する必要がある(三菱、富士の技術資料から)。  

 WEBで拾った表皮効果についての記述   
   
 導体を電流が流れると磁界が生じます。電流が交流だと交流磁界が生じますが、これは導線の中にも存在します。そして、交流磁界は導線の中に起電力を生じますが、この起電力は電流の変化を妨げる方向に生じます。   
   
 もっとはっきり言うと、自分が出した磁界で、自分自身(電流)が流れにくくなるのです。(自己インダクタンスも参照してください)   
   
 導体の表面は磁束との交差が一番少ないので一番流れやすい場所なのです。(導体の中心は導体全部が出した磁界とリンクしますが、表面はそれより内側の磁束とはリンクしません)   
      
 導体内部がすかすかの導体を使うと、ムクよりよく流れるかというとそうではありません。ただ、電流を流すのに寄与していない部分はなくても良い、という考え方です。中心だって全然寄与していないわけではないのですが、寄与率が低いので切り捨てられるのです。(切り捨てた割には流れにくくならない)   
      
 むしろ、細い線を束ねたものがよく使われます。線どうしは絶縁してあります。高周波は1本1本の表面を流れますが、多数あるので真ん中の方でもちゃんと流れます。リッツ線と言いますが、これは近接効果も関係しています。   
   
 表皮効果は高周波だけの現象ではありません。低周波では起きない現象だと勘違いしている人もいるようなのでご注意ください。   
   
 たとえば、送電線は50Hzか60Hzを流しますが、この周波数での表皮深さは約10mmです。なので、直径20mm以上の太い線を張るのは効率がよくありません。   
   
そこで、中心には電気を流す必要がないからスチールの丈夫なワイヤを配置して、周囲をアルミや銅で覆うという構造の線が使われます。   
   
 表皮効果を完全に理解するのは結構大変ですよ。   
   
 その他   
   
 B-747ジャンボ機はエンジンが4機あり、1機につき60kVAの発電機が設置されており合計容量は240kVAである。そのほか地上で使用する補助の小型タービン発電機などのパワーユニットが尾部に設置されているようだ。   
   
 地上で航空機の整備その他に使用される400Hz電源は静止型(電子式)、回転型(機械式)があり数kVA~120kVA程度の容量がある。   
   
 効率がよいのなら商用周波数の50,60Hzも400Hzに変えればよいと思えそうだが、表皮効果やリアクタンス(Xl)が多くなるので送電、配電線でのロスが多く実用出来ない。航空機や船舶のような閉個所での使用に限られている。   
   
 最新の航空機の電力供給システムの動向は従来の電気、油圧、空気力の3種類の動力を全て電気に置き換え、かつ、230V可変周波数(360~800Hz)の発電機を採用しDCも28Vのほか270Vも採用されているが研究、開発段階のようである。